昨日7月7日(日)、日本の首都東京で4年に1度の東京都知事選が行われました。
七夕決戦といわれ大きな注目を集めていましたね。
かわっちょの視点から今回の都知事選を振り返ってみたいと思います。
蓮舫3位は「衝撃」か?
結果は
小池百合子さん(現職)
石丸伸二さん(広島県 元安芸高田市長)
蓮舫さん(元参議院議員)
となりました。
小池さんが3期目となる当選です。
これまでも東京都知事選はすべて現職が再選されてきましたから、小池さんが勝利を収めるであろうことは既定路線ではありました。
蓮舫さんは今回3位に終わりました。
この結果について、蓮舫サイド関係者からは「衝撃」「予想外」「信じられない」「まさか」という声が出ているという報道が多くなされています。
しかし、この結果は「想定内」であり「全く驚かない」結果ではないでしょうか?
「当選は無くても、2位には収まる」という高をくくっていたのだとしたら、それは驕りであり傲慢だったと反省すべきだと思います。
少なくとも「蓮舫3位」というのは「普通にあり得る」レベルの話であったと思うし、その「普通にあり得る」レベルの話が現実になってしまっただけであって、「何が起こってるんだ!」「衝撃!」と驚きをもつようなニュースではないと感じます。
蓮舫さんは結局、東京をどうしたかったの?
蓮舫さんは元タレント・元ニュースキャスターで高い知名度を誇ります。街頭演説や国会では舌鋒鋭く攻めていくスタイル(「2位じゃダメなんでしょうか?」が有名ですよね)が特徴的で、良くも悪くも目立ち、「メディアウケ」しやすいことが強みの政治家です。
今回もそうでした。
「小池都政をリセット」「あなたと次の東京へ」とキャッチーなことを言い、小池都政を批判したうえで「”新しい東京”にするんだ。私ならできるんだ」と訴えました。
蓮舫さんのホームページには「7つの公約」が掲げらていて、
- 現役世代の手取りを増やす ー本物の少子化対策ー
- あなたの安心大作戦 ー頼れる保育・教育・介護・医療へー
- もっと多様で生きやすく ーあなたの人生の選択を大切にするー
- 本物の行財政改革 ー徹底見直しで、ガラス張りの都政にー
- 本物の東京大改革 ー古い政治から、新しい政治へー
- 東京全体をもっと良くする ー未来への責任/住みよい多摩へー
- 良い政策は発展させる ー行政の継続性も大切にー
が訴えられていました。
ただ、この「”新しい東京”のビジョン」「”次の東京”にするための公約」は、蓮舫支援者ではないごく一般的な有権者や無党派層まで届いていたでしょうか。共感されていたでしょうか。
そもそも、今回の都知事選では候補者たちによる政策論争は盛り上がりに欠けたものになっていました。
小池さんや蓮舫さん、石丸さんなど主要候補者たちによる、討論会やディベートもほとんど0といっていいほど行なわれませんでしたし、政策を詳しく取り上げるようなニュースもあまりなかったように思います。
都民にしてみれば、政策による違いを十分に考える余地なく、投票を迫られている感があったのではないでしょうか。(今回の都知事選に限ったことではないかもしれませんが)
今回の都知事選は政策やマニフェストの違いにより、有権者…強いていえば、無党派層の投票行動が変わったのではなく、全く異なる要素から無党派層の投票行動が決まったと考えるべきでしょう。
蓮舫さんは「与野党対決」にしたかった?
当初「小池VS蓮舫の一騎打ち」という構図で報じられることの多かった選挙戦。
小池さんと蓮舫さんを支援している政党の図式は、国政における与野党の構図そのままであり、比較しやすいこともあったのかなと思います。
小池さんを支援していたのは都ファをはじめ、自民・公明の与党側で、蓮舫さんを支援していたのは立民、共産でした。
政党からの支援を受けていた小池さんと蓮舫さんですが、「支援の受け方」には違い、温度差がありました。
「私、何の支援もされてません」風を装った小池さん
小池さんを支援する自民・公明は「自主的な支援」という形にとどめ、表立った支援を控えました。
岸田政権を筆頭に自民・公明の与党側は裏金問題により支持率がずっと低迷したまま。
要は「落ち目」「逆風真っただ中」な自民・公明なわけです。
そんな自民・公明がでしゃばって、全面的に小池氏を支援していることが強調されれば、支援になるどころか逆効果。かえって小池さんの知名度と人気に水を差すことになりかねません。
こうしたことから自民・公明は政党色を薄めて薄めて薄めて、なんの支援もしていないかの如く水面下で投票を呼び掛ける程度に抑えました。
もちろん、自民党議員との街頭演説なんてされていません。
それと対照的だったのが蓮舫サイドでした。
あからさまに立民・共産から支援を受けた蓮舫さん
蓮舫さんは小池さんとは対照的に、立民・共産の支援を表立って受けていました。
立憲民主党と日本共産党が統一候補として「全面的に」蓮舫さんを支援したのです。
元首相で知名度の高い野田さんや、立憲民主党の創設者である枝野さん、日本共産党の元議長である志位さんまでもが街頭演説に繰り出し、全面的に蓮舫さんをわっしょいわっしょい持ち上げていました。
自民・公明が落ち目で逆風なことを活かして、与野党対決・政党対決を全面的に打ち出したかったのだと思いますが、この戦略は根本的に誤りだったと思います。
なぜなら、自民党が不人気で支持率が低迷しているとはいえ、共産党はもちろん、立憲民主党の支持率が伸びているかと言えば伸びていないからです。
NHKの6月の世論調査による政党支持率で自民党は25%だったのに対し、立憲民主党は9%で共産党は3%です。合計しても25% VS 12%なわけでダブルスコアがついています。
ちなみに無党派層は44%と圧倒的な数を持っていて、この数ある無党派層をターゲットにした戦略を打ち出していれば、蓮舫さんへの票はもうちょっと増えたのではないかと思います。
「無所属の私」をもっと前面に出すべきだった蓮舫さん
蓮舫さんは今回の選挙で立民・共産から全面的に表立って支援を受けていますが、実は(というか当然といえば当然のことなのですが)都知事選に立候補した後、立憲民主党を離党しています。
その際、こんなコメントをしています。
「一般的に首長選挙となりますと、やはり無所属というのが普通の景色だと思っていますので、その部分では今回は都民のために無所属という形を選びました」
であるならば、なぜ、こんなにも表立って「立民・共産色」を打ち出してしまったのでしょうか。
これではなんのために離党したのかわかりません。
「首長選挙では無所属が普通」だから「形式的に」離党したに過ぎないのであれば、いっそのこと離党なんてしなくても良かったのではないですか?と問いたくなってしまいます。
「自民党は嫌。でも、だからといって、立民・共産には投票しにくいし、投票したくない」という無党派層が圧倒的多数であり、誰もが受け皿を求めている今、蓮舫さんに効果的だった戦略は「立民・共産の組織票ガッポリ戦略」ではなく「無所属の私」「なんの政党色もない私」を大々的に打ち出す戦略だったのではないでしょうか。
立民のみならず共産からも全面的な支援を受けたことにより「一線を越えた左側の人」というイメージがつき、投票しにくくなってしまった蓮舫さんの代わりの受け皿となり、無党派層の支持を伸ばしたのが石丸さんでした。
無党派層の受け皿となった石丸さん
石丸さんは「小池さんに投票するのもためらうが、だからといって蓮舫さんには投票しにくい」という無党派層の票を取ることに成功しました。
無党派層は蓮舫ではなく石丸に投票した
実際、無党派層の4割は石丸さんに投票したというデータも出てきます。
無党派層は蓮舫さんではなく石丸さんに投票していたのです。
共同通信社の出口調査結果によると、「支持政党なし」とした無党派層の投票先は石丸氏が37%でトップ。とりわけ年代別では、18~29歳の41%が石丸氏に投票した。
都知事選2位の石丸伸二氏に無党派37%、10~20代4割が投票 後任市長は批判派当選 - 産経ニュース (sankei.com)引用
ただ、無党派層が石丸さんに投票した理由は積極的なものではなく消去法的なものだと思います。
石丸さんはそもそも東京に縁もゆかりもない方です。
出生地は広島ですし、大学は京都大学、三菱UFJ銀行に入社しアメリカに赴任して帰国したあと東京に住んでいたようですが、日本の中枢である首都・東京との縁とゆかりはその程度です。
「都知事選に出馬されるまで、石丸さんのことを知らなかった」
そういった方は多いのではないでしょうか。
「今まで顔と名前すら知らなかった候補」である石丸さんに無党派層の4割も投票したのだとすれば、それは、あまりにも政党色・イデオロギー色が出すぎて投票しづらくなってしまった蓮舫さんの代わりの受け皿となったから、と考えると得心しやすくはないでしょうか。
蓮舫さんの1人負けだった都知事選
今回の選挙は小池さんが勝ちました。
それは当然ですね。都知事の座を死守したわけですから。
石丸さんは都知事の座は射止められませんでしたが、「小池さんには投票したくない層の受け皿」を決める2位争いには勝ちました。
当初「小池VS蓮舫」という構図で大々的に報じられていた中での2位。
都知事選に出るまでほぼ無名といっていいところからスタートしての2位なので、負けというよりも「むしろ大勝利」といっても良いのではないか、と思います。
では蓮舫さんはどうでしょうか。
蓮舫さんは小池さんにも石丸さんにも負けました。
しかも、当初「小池VS蓮舫」の一騎打ちという形でマスコミから大きく注目されていたにも関わらず、2位に着くことすらできなかったのです。
つまり蓮舫さんは「大敗」といっていいでしょう。
こうした意味で今回の都知事選は蓮舫さんの「一人負け」だったといえるのではないでしょうか。
蓮舫さん「3位じゃダメ」ですよね?